革ジャケットのクリーニング、アットデアの“職人のこだわり” 第1回

ジャケットモデル

季節は立春を過ぎ、一部ニュースでは「寒さの峠は越えた」なども聞かれます。これから春が近づくにつれ、厚手の革ジャケットの出番も少しずつ減ってゆくことでしょう。アットデアでは、ひと冬一緒に過ごした革ジャケットについて、保管の前のクリーニングをお勧めしています。

どんなに大切に扱っていても、ひと冬で汚れが付着してしまうもの。そのまま次のシーズンまで保管してしまうと、汚れの沈着だけでなく、カビや細菌が増殖。結果、お気に入りの革ジャケットの寿命を短くしてしまうことも・・・。

そこで、アットデアでも度々ご紹介している革ジャケットのクリーニングや補修ですが、私たちの「こだわり」をもっと知っていただくために、4回に分けて改めてご紹介してみたいと思います。
今回教えていただくのは、アットデアの革製品部門で技術提携中のレザーリペア職人、(株)レクザ 代表の山澤真澄さん。

▪️ズバリ、革ジャケットのクリーニング方法とは?

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山澤)革製品はとてもデリケート。「生きている」と考えています。染色も、同じ動物の皮でも部位によって質が違う。同じメーカーの製品でも加工が違う。ましてや同じ商品でも保管や使用年数などにより状態が違います。ですから、「これ」という正解がありません。製品ひとつひとつの汚れの種類、程度を見極めた上で、革の材質、硬さ、原産国の特徴、色、染色方法や工程、ステッチや折り曲げの加工方法を全てチェックし、ひとつひとつの感触を細部まで確かめ、適した洗い方を検討します。


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そして洗い方は、「水が使えるか否か?」で分かれます。

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ひとつがドライクリーニング。有機系の特殊溶剤で汚れを落とす方法で、水溶性の汚れには弱いですが、水では落ちない油脂系(油性インクや口紅など)の汚れに適しています。ただ、ドライクリーニングで使う溶剤は主に油脂系(石油系)を含むもの。つまり、油汚れを油脂系の洗剤で洗い流すイメージですが、この場合、材質変化や色落ちなどに注意が必要です。

 

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そして水を使ったクリーニング方法。表皮に付着したタバコのヤニやスレ、食べ物のシミや泥、汗などの汚れをトータルで落とすには有効です。カビの汚れには、革製品専用のクレンジングウォーターを使用します。どちらも「水を使う」と言っても、機械に一度にドサッと入れてジャブジャブ洗う・・・、そんなイメージは持たないで下さい。ただ、水で洗うデメリットもあります。革製品は、水で洗うとほぼ100%縮みます。靴などの場合は革の使用面積が小さく、硬い革が使用されている場合が多く、それが目立ちません。カバンは靴よりも革の使用面積が大きく、革の縮みにより変形する場合がある。しかも副資材(底面のウレタンや、内側のライニング、ハンドル部分の芯など)が先に歪み、それに伴い皮革部分が歪む場合もある。そしてジャケットなどは革の使用面積が大きく、しかも柔らかく、縮みやすい。

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また「色」について。先ほど「原産国や染色方法のチェック」と言いましたが、産地により特徴があります。ある国の製品は、発色が良い反面、タオルでこすっただけで色移りしたり、手に持っていただけで、手のひらに色が付着するものもあったりする。そういう場合、どちらのクリーニング方法でも、汚れと一緒に染料が流れ出てしまう。それが乾く時に一箇所に固まり、色ムラになる。さらに「ステッチの加工方法を見る」とも言いましたが、そこからノリが溶け出すこともあり、それも新たなシミになってしまいます。縮むこと以外にも注意すべきポイントがあるのです。

ドライクリーニングでも、水を使ったクリーニングでも、どちらも革製品の個々の状況を見極め、変化を最小限に抑えることができるのは、私たち職人の技術と経験です。


以上のように、手間を惜しまず、ひとつひとつの製品に合わせたクリーニングを行う・・・。革ジャケットのクリーニングは、革の特性を充分に理解したプロにしかできない技なのです。

次回は、「革ジャケットが最も苦手な汚れ」についてのお話をご紹介します。